子どもたちが通う武道道場を運営していると、多かれ少なかれ「保護者とのトラブル」は発生します。
小さな行き違いから深刻な問題まで、指導者なら一度は経験したことがあるはずです。

本記事では、武道道場全般で共通する保護者対応の難しさと、トラブルを未然に防ぐ実践的な解決策を紹介します。

このコラムを書いた人
大谷悟
  • 道場専門のコンサルタント、ウェブ解析士
  • 武道を職業として成立させるために全国の道場長をサポート
  • 広告を使わずに1年で100人の新規入会者を獲得
  • 道場専門のHP制作サービス(WEB道場)運営
  • 道場検索サイト(武道・道場ナビ)運営
  • 自身も武道有段者で道場を運営
  • 前職は国家公務員として広報や政府開発援助に携わる

なぜ保護者トラブルは起きるのか?

全ての保護者がそうだとは言いませんが、多くの保護者は自分の子供を第一に考えます。
これは、決して悪いことではなく親として当然の心境だと思います。
しかし、道場の指導者は全ての子供を公平に扱う必要があります。
このギャップが多くのトラブルの原因となります。

よくあるケースとして

「うちの子をもっと見てほしい」
「うちの子だけが試合に勝てない」

という自分の子供への対応を求めてくることがあります。

このような要求があった際に安易に同調する事は危険です。
なぜなら、一度要求を飲むと次から次へと要求される恐れがあるほか、他の親から同一の要求があった時に断ることができなくなるからです。

これは言われてみれば当たり前のことで、この記事をお読みになっている道場長や指導者の方は言われなくても分かっていると思うかもしれませんが、しっかりと肝に銘じて置く必要がある大切な事です。

とはいえ、保護者からの要求が来た際にまったく対応をしないことも難しい状況があります。
では、どのように対応することがよいのでしょうか。

保護者対応で重要なのは「理由を伝えること」

保護者から要望を受けた際、ただ「できません」と突っぱねるのではなく、必ず理由を添えて説明することが大切です。
理由がなければ、「なぜ断られるのか」と反発を招き、余計に不満を募らせてしまいます。

事例:ある空手道場での対応

とある空手道場で、保護者から次のような要望が寄せられました。

「うちの子を試合で勝たせたいので、もっと組手の練習を増やしてほしい」

このとき、単に「お子さんだけに合わせた練習はできません」と断ると、
「なぜ組手を増やしてくれないのか」という不満が残ってしまう恐れがあります。

解決のカギは「道場理念」

この空手道場では、理念を根拠に説明する方法を取りました。

その道場の理念は「試合に勝つこと以上に、武道を通じて子どもを育てること」。
そこで、保護者に対して次のように伝えたのです。

「当道場では試合で勝つことも大切にしていますが、それ以上に普段の稽古を通じて子どもたちを育てることを道場の理念・方針としています。そのため、組手だけを増やすのではなく、心身をバランスよく鍛える稽古を行っています。」

このように理念を理由として伝えることで、ただの「拒否」ではなく、道場の方針に基づいた説明となり、保護者の納得を得やすくなります。

それでも納得しない保護者への備え

もちろん、理念に基づいた説明をしても、納得しない保護者がいることもあります。

この空手道場では、そうした状況に備え、入会前から理念を発信する工夫を行いました。

HPなどで理念を前面に出す

保護者が入る前に保護者とのトラブルを減らす方法は、「HPなどで道場の理念をしっかりと打ち出す」という方法です。
理念というと伝わりにくいかもしれないので道場の方針でも良いと思います。

道場の方針をしっかりと打ち出すことで、その方針が良いと思った人たちが入会することが予想されます。
元々求めているものと道場の方針が一致しているためトラブルになる可能性は低くなります。

これが、道場の方針があいまいだったり打ち出していないと色々な要望を持った会員が集まり、やがて道場の方針と合わなくなるとトラブルになります。

もちろんこの方法で全てのトラブルを防ぐことはできませんが、

  1. 自分の道場の理念(方針)を発信する
  2. それに賛同する人たちが集まる
  3. 方向性が同じのためトラブルを防げる

この流れは組織が大きくなればなるほど効果を発揮します。
道場のHPで理念や方針をしっかりと打ち出して入会前からトラブルの芽を摘んでおきましょう。

理念に基づいた対応の注意点

これまでお伝えした理念に基づいた対応には一つ注意点があります。
それは対応する道場長や指導者が理念からブレないという事です。

保護者からの要望に押されて理念と異なる対応を取ったり、時と場合によって対応を変えてしまうとその対応の正統性が失われてしまいます。
そうなると信頼を失ったり今後の道場の方針がブレて自分の思う方向とは違う方向に進んでしまう恐れがあります。

道場運営の根幹を成す「理念」は時々見返してそこから外れていないかチェックする必要があります。

道場での見学に起因するトラブル

上記の他に、道場での見学に起因するトラブルも起こりえます。
道場の見学についてはこちらの記事にまとめていますのでぜひ、参考にされてください。
道場で親の見学はあり?無し?それぞれのメリット・デメリットを解説

まとめ

今回の記事では保護者とのトラブルの解決方法として

  1. 自分の道場の理念(方針)を発信する
  2. それに賛同する人たちが集まる
  3. 方向性が同じのためトラブルを防げる

という方法をご紹介しました。

これは保護者とのトラブルの解決だけではなく、会員の満足度の向上にもつながるので、ぜひ、道場の理念を改めてHPやSNSで発信してみてください。