道場コンサルタントは、全国の武道道場の運営者や指導者を対象に、道場運営に関するアンケート調査を実施しています。
本調査の目的は、道場運営の現状を把握し、運営者や指導者が直面している課題を明確にすることです。
その一環として、2020年1月から2024年12月までの5年間にわたり、ご支援させて頂いている道場にて継続的に実施された体験練習アンケートをもとに、体験参加者のリアルな声を分析しました。
今回のレポートでは、266件にのぼる体験者の回答を年齢別に分類し、「どんな体験が評価され、何が入会の後押しになっているのか」を読み解いています。
道場の体験設計を見直したい方、入会率を上げたいと考えている方にとって、具体的なヒントが詰まった内容となっています。
調査結果のポイント
- 道場体験の満足ポイントは年代によって異なる傾向が見られた
- 幼児は「安心感」、小学生は「礼儀とわかりやすさ」、中高生は「本格性」、大人は「気軽さや継続性」を重視
- すべての年代で「丁寧な指導」が共通して高く評価された

アンケート結果の概要
本調査は、道場コンサルタントのご支援道場にて、2020年1月〜2024年12月の5年間にわたり実施された体験練習アンケートの結果をもとに分析したものです。
- 回答者数:266名
- 分析対象:体験練習に参加した幼児〜大人
- 回答内容:体験に対する満足度、印象に残った点、始めてみたいと思った理由など
年齢カテゴリ | 回答数 | 代表的な感想 |
---|---|---|
幼児(6歳以下) | 66件 | 先生方の目がよく行き届いている道場だなと思いました。 幼年部の生徒さん方にもしっかり「人と人」として向き合って指導されている様子が印象的でした。 |
小学生(7〜12歳) | 74件 | 最初は緊張していましたが、率先して体験に臨んでいる子どもの姿が見られました。 初めてでも先生がわかりやすく、安心して取り組めたようです。 |
中高生(13〜18歳) | 32件 | とても親切に熱心に、丁寧にわかりやすくご指導いただけ、未経験の息子も安心して参加させていただくことができました。 |
大人(19歳以上) | 94件 | 先生が私の体力からよく気にかけて下さり、また、黒帯の生徒の方もとても親切に教えて下さったので、安心して動けました。 運動が久しぶりでも無理なく楽しめて、継続して通いたいと思える雰囲気でした。 |
本調査から分かること
本調査を通じて明らかになったのは、体験における参加者の価値判断が、年代ごとに大きく異なるという点です。
どの世代にとっても「丁寧な指導」は共通の評価軸である一方で、それぞれの年代が体験に求める要素には明確な違いが見られました。
幼児
保護者の視点が大きなウエイトを占め、
「子どもが楽しめるか」
「安心して預けられるか」
が判断基準となっています。
先生の笑顔や声かけ、落ち着いた指導スタイルが高く評価されました。

小学生
小学生では
「分かりやすい説明」
「礼儀を学べること」
が重視され、
「できた」「認められた」という達成感が入会意欲に直結していました。

中高生
中高生では、
「挑戦できる場」
「本格的な技術習得」
が求められ、技術的な内容と個別対応がバランスよく提供されることが満足度を高めています。

大人
大人では、
「健康のために無理なく継続できること」
「先生の人柄や配慮」
が重視されており、初心者への接し方や柔らかい空気感が評価されていました。
これらの結果から、年齢層ごとに体験設計のアプローチを変えることが、体験満足度と入会率向上の双方に寄与することが示唆されます。

調査結果から得られる示唆
今回の調査から得られた最大の示唆は、体験者の年齢層によって求める価値が大きく異なるという点です。
各年代に応じてアプローチを最適化することで、入会率向上の可能性が高まります。
- 幼児
保護者が安心できる空間設計と丁寧な声かけ。体験中の写真共有や名前を呼んでの褒め言葉が効果的です。 - 小学生
「できた!」という達成体験と明確な目標づくり。「目標カード」などの目に見える達成感が重要です。 - 中高生
本格性と挑戦の要素を強調。「この道場で自分は成長できる」と感じさせる体験が重要です。 - 大人
生活に無理なく取り入れられる参加頻度・スケジュールの柔軟性を案内することや、安心できる雰囲気づくりが鍵です。
また、すべての世代に共通して「丁寧な指導」が高く評価されています。
体験の短い時間において、基本に忠実で誠実な対応が、入会を後押しする最大の要素であることが改めて確認されました。
道場経営者の皆様へ
今回の調査結果は、ある特定道場での取り組みから得られた実データではありますが、全国の道場にとっても再現性のある学びが詰まっています。
「体験者の年齢ごとに、求める価値はこんなに違うのか」
「“丁寧な指導”がこれほどまでに信頼に直結するのか」
こうした気づきは、日々の稽古や体験対応を振り返るきっかけにもなるはずです。
現代の道場選びは、「強くなれるか」だけでなく、「安心できるか」「続けられるか」という視点でも見られています。
その中で、体験という最初の接点が果たす役割は非常に大きく、その後の入会や継続を左右すると言っても過言ではありません。
本記事が、道場運営・体験設計・入会導線づくりのヒントとなり、地域に根ざした道場運営の一助となれば幸いです。